先月の話になってしまいますが、大阪・中之島の国立国際美術館で定期的に開かれているイベント「中之島映像劇場」で、世界的に知られる映画作家ジョナス・メカスの「リトアニアへの旅の追憶」(1971-72)が上映され、観に行ってきました。16ミリフィルムの手持ちカメラで日々映像を撮りためるスタイルで、「日記映画」と呼ばれる分野を開拓してきたメカスの代表作とされる映画です。
第二次世界大戦中にナチスドイツ支配下のリトアニアから亡命を試みたものの強制労働キャンプに収容され、脱走してアメリカに亡命したメカスと弟の、20数年ぶりの帰郷を記録したこの映画は、コマ撮りに近いほど極めて細かいカット割り、露出オーバーによって明滅する眩い光の表現など、たいへんユニークな映像表現が特徴です。生き別れた母親との再会、兄弟が子供のように背比べなどをする光景とともに、その表現がアクセントになって、なんともいえない郷愁に胸を締め付けられるようでした。
実はこれは撮影直前に新たに購入したカメラが不良品のため絶えず回転ムラが起こり、露出が安定しなかったために偶然生まれたものだそうです。同様の手法は、映画やドラマ、PVなどで過去をノスタルジックに表現するときに広く用いられております。
フィルムをDVDに変換(テレシネ)しようとすると、細かく明滅する現象が起きますが、これはフリッカーノイズと呼ばれます。これはフィルムとDVDとでは一秒間のコマ数が異なるために起こる現象です。メカスの映画では不規則な明滅が効果的な芸術表現に昇華していましたが、テレシネ時のフリッカーノイズは規則的に絶えず明滅して、非常に見づらくなってしまいます。
当社では大切な記録と記憶を損なうことのないよう、ノンフリッカーでのテレシネを行っておりますので、フィルムをご所有の方は、是非ご検討ください。
Y.R
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