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道なき道
2025年04月10日
久しぶりに小説を読みました。小説といっても短編集の中の一篇です。大好きな織田作之助の「道なき道」です。
9歳の女の子・寿子とヴァイオリン弾きの父・庄之助のお話です。
庄之助は自ら講師としてヴァイオリン教室を営んでおりますが、生徒は1人もいません。庄之助の偏屈な性格とヴァイオリンへの異常な熱意が故のスパルタ教育で、どんな生徒もすぐに辞めてしまいます。
そんな理由からか、庄之助は娘・寿子に日々ヴァイオリンを教えています。教えている、と書くと柔らかく聞こえますが、実際はスパルタ教育です。学校から帰宅するとすぐに特訓が始まり、夜遅くまで、時には翌朝まで庄之助によるヴァイオリンの特訓は続きます。
そんな父のスパルタな特訓をこなし続け、小学校を卒業した寿子はとある大きなヴァイオリンコンクールで賞を受賞します。
コンクール後に寿子に向かい「天才」と口にする人々に向かって発した庄之助の言葉が非常に印象的だったので下記に引用します。
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「天才? 莫迦莫迦しい。天才じゃありません。努力です。訓練です。私はもう少しでこの子を殺してしまうところでした。それほど乱暴な稽古をやったのです。ところが、この子は運よく死ななかっただけです。天才じゃありません。寿命があったんですよ。それだけです」
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日々の特訓に怯むことも逃げることもない勝ち気な寿子の姿に、楽器を弾く人間の端くれとして、背筋が伸びるような気持ちになりました。これからも定期的に読みたい一篇です。
T.K
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