元来、秋冬史上主義とはいかないまでも、どうも春と夏が苦手だった私ですが、一昨年あたりから徐々に春と夏の良さがやや理解できるようになってきました。これも年を重ねた証明でしょうか。
春といえば出会いと別れの季節です。
年少組だった私の長女も、進級にあたって仲の良かった子とは違うクラスになってしまうそう。
悲しんでいるのかな、と思いきや、友達が離れてしまう事は何のその、年中組への憧れが強い娘は「早く運動会で玉入れをしてみたい」だそうです。根暗な私に似なくて本当に良かったと常々思います。
3月も終わり暖かく過ごしやすい日もちらほら。
そんな上着無しのシャツ1枚で過ごせるような、綺麗に晴れ渡った先日の日曜日のこと、所謂、運命的な出会いを経験致しましたことをつれづれと。
名古屋の大須商店街を一人ふらふらしていると、ある中古楽器屋さんが目に入りました。
雑居ビルの2階にあり、窓からギターが数本見えるけど、そんなに広くはなさそうなお店。
時間も余っているし、"なんとなく"興味を持ったので、ビル1階にある人一人がやっと通れるような狭い階段を登って店内に入ってみました。今思えば、この"なんとなく"が虫の知らせだったのかもしれません。
店内へ足を踏み入れた瞬間、私の目に飛び込んできたのは真っ赤なエレキギター、それは私がずっと憧れていたEpiphone製Casinoでした。「どうせお高いんでしょう」と思いながらも反射的に値札を見ると予算オーバーしているものの、頑張れば買えるような何とも神の悪戯を感ずる値段。(事実、このお店に行く直前に別の中古楽器屋さんでCasinoを見つけたものの、当然の如く手の届かないお値段できっぱり諦めました)しかも、なんとハードケース付。
店員さんに試奏許可をしたところ、「そのカジノ、みんな狙ってるんですよねえ」とお決まりの台詞。
店員の甘い言葉に惑わされずに試奏をしたところ、嬉しいような悲しいような、申し分無し。
我が愛機ES-335とは違った箱鳴り的なアレが非常に心地良く(音は勿論、ボディから伝わる振動も心地よい)、少し歪ませた時の中低音の粒の細やかさはもはや快感。カジノといえば、個人的にはThe Beatlesの「Revolution」のイントロとバッキングなのですが、まさにそれを彷彿とさせる音色。ボディも目立つ傷がなくピカピカ。100点満点。
喉元から手が出ていたのにも関わらず長時間試奏しながら金銭面で悩み続けていた私に向かって、店員さんが一言。
「買わなかった後悔はずっと忘れないけど、買った後悔は3日で忘れますよ」
この言葉を聴いた後、私の記憶は綺麗になくなり、気が付くとクレジットカード支払いのレシートを右手に、Epiphoneのロゴマークが描かれたハードケースを左手にして、商店街を歩いておりました。
以来、ES-335とCasinoとの戯れに耽続ける日々を過ごしております。幸せです。
T.K
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