ボブ・ディランの映画「NO DIRECTION HOME」を観ました。
生い立ち~レコードデビュー~1965年の転機(アコースティックからエレクトリックへ)~1966年バイク事故からの復帰までの約25年間の映像をディラン本人と関係者らがインタビュー形式で語るドキュメンタリー映画です。
この映画で個人的にとても心に響いた言葉がありました。
2つ紹介させて頂きますが、ディランのアルバムは初期の3~4枚程しか聴いたことがなく人並みの知識かそれ以下しか持っていません。誤情報があってもご笑覧下さい。
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「(自らが書いた歌詞について)いつか馬鹿共が『この曲はこういう意味だ』とか『この曲はこんなメッセージを持っている』とか勝手に考察する。書いた本人ですらあんまり良くわかっていないのに。」
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プロテストフォーク歌手の象徴となったディラン。そんなディランの曲が一人歩きし、メディアやファンの間で歌詞について様々な憶測が飛び交ったことに対しての皮肉でしょうか。
たしかに詩ってそういうものだよなと思いました。石川啄木も随筆で同様なことを語っていたような。
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「大きい音でやろう!」
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単純にこの言葉だけ聞いてもどこが心に響くんだって感じですね。
デビュー以来アコースティックギターとブルースハープで演奏してきたディランですが、音楽での表現の幅を広げる為にアコースティックギターをエレキギターを持ち変え、弾き語りスタイルからバックバンドを従えるバンド編成へと徐々に変遷していきます。
しかし当時のフォークファンの間では「大きな音で演奏しているようなロックは裏切り者の音楽」という考えがあり、そのスタイルの変化は一部(大半?)のファンには快く思われなかったよう。
1965年に出演したニューポートフォークフェスティバルはそんなバンド編成でのデビューライブ(前半は従来通りの弾き語りスタイル、後半はバンド編成という構成だったそう)でしたが、バンド編成時には大きくブーイングが起こり、一部のファンには受け入れられず。
そんな苦々しいデビューライブでしたが、それでもディランはめげずにファンからのブーイングに逆らいながらも(撃ち殺す等脅迫もあったそう)バンド編成でのライブやツアーを続けていきます。
ある日、ライブ会場でバンド編成でのセッティングをしていると観客から「裏切り者!」と野次を飛ばされます。それを聞いたディランは「お前なんか信用しない」と吐き捨て、バックバンドのメンバーに「大きい音でやろう!」を声をかけライク・ア・ローリングストーンを演奏します。
この「大きい音でやろう!」という一言は、上述したような頭の硬いフォークファンの野次に対するディランからの返事とも捉えられます。が、観客からのブーイングに耐えながらも自分自身を信じて突き進むディランの信念も猛烈に感じました。
心なしかその後演奏したライク・ア・ローリングストーンのサビ部分「How does it feel(どんな気分だい?)」もどこか特別に聴こえました。
二部構成の映画でしたが長さを感じさせない(むしろ物足りないくらい)終始感動しっぱなしの素晴らしい作品でした。
そういえばディランのレコードは持っていないので、レコードでも聴きたいと思いました。
T.K
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