先日古本屋で谷川俊太郎さん編集の中勘助の詩集を見つけました。谷川俊太郎さんの詩が好きなので、間違いないだろうということで財布と睨めっこの末、購入。
まだ全て読めていないのですが、わかりやすく親しみやすい文体で儚くて切ない気持ちを詠った詩が数々有り、じーんとしてしまうような、今の季節にぴったりな詩集です。
この詩集の中にコオロギに関する秋の詩がありました。
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肩すそさせのこほろぎは
秋の夜ごとに涙をさそふが
あなたがそばにゐたときは
それはやつぱり唄だつた
...(続く)
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という詩。
冒頭の「肩すそさせ」とは何ぞや。
調べてみると、どうやら「肩させ裾させつづれさせ」という言葉の一部のようです。
なんとこの言葉、昔の人が考えたコオロギの鳴き声を表した言葉だそうです。
この詩を読んで思い出したのが、先日の夜の出来事。
娘がどうしても布団に入ることを拒み、寝室から脱走を繰り返しては泣き叫んでいました。
イヤイヤ期を真っ当している証拠だろうとあまり気を揉めずに娘を落ち着かせ、事情聴取をしてみると、どうやら家の外に行きたい御様子。
「ここでまんまと外に連れ出したら癖になっちまう」と直感しつつも脱走犯の相手で疲れ果てた妻への労いも込め、脱走犯に「今日だけね」と諭し、おんぶで自宅マンションの前まで散歩に行きました。
夜更け近い時間に外に出歩くことが滅多になくなったので静まり帰った自宅周辺がどこか新鮮でまた頬に当たる夜風も気持ち良く、泣き顔で鼻水すすってた背中の脱走犯もいつの間にか落ち着いていました。
そんな様子でマンションの前をふらふらしていると、マンション前の閑散としたゴミ捨て場からコオロギの鳴き声。
よく見るとゴミ捨て場の塀にコオロギがいました。娘に見せたら興味を示すかなと思い、背中の娘に見せようとすると、コオロギは塀の裏側に逃げて行ってしまいました。
その時のコオロギの鳴き声が「肩させ裾させつづれさせ」と聴こえたような聴こえていないような。
自宅に戻ると案の定娘は再度脱走犯と化しましたが、夜の散歩をせがんだのは幸いなことにこの日だけでした。
T.K
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