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ラップと『ムーンライト』
2017年05月23日
『The Rap Year Book』という本を図書館で借りて読んでいます。各年1曲ずつラップのヒット曲や話題曲をピックアップしてリリック(歌詞)を読み解くという内容ですが、その当時の社会状況などが反映されているのがわかり、ブラック・アメリカンの精神史ともいうべき側面もあって面白いです。
「初恋の思い出」はポップスの世界では昔から歌われているテーマですが、ラップでは2000年代のドレイクが初めてらしい。ラップの世界は性差については案外保守的なのかも(「男子たるもの柔なことは言ってはいけない!」)。
そこで思い出すのが今年のアカデミー賞受賞作の『ムーンライト』。これはまさに「初恋の思い出」の映画。それが麻薬の密売や殺傷沙汰などが頻発するマイアミの、極めて危険な一帯を舞台に、ある種のマッチョ文化の中で展開される意外性。ドレイクの曲との同時代性を感じます。
この映画の冒頭、麻薬ディーラーの車から流れるボリス・ガーディナーの『Every N****r is A Star』。前掲の本でも取り上げられているケンドリック・ラマーの、エポックメイキング的なアルバム『To Pimp A Butterfly』のオープニングにサンプリングされた曲です。こんなところにもラップ・カルチャーとのリンクを感じます。
Y・R
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