昨今、過去の映画にオマージュを捧げた映画は多々ありますが、先日映画館で見た「キャロル」という映画は、別格といいますか、作品自体が古典の雰囲気を漂わせる名作でした。
原作はヒッチコックの「見知らぬ乗客」やフランス映画の「太陽がいっぱい」などで知られる女性作家パトリシア・ハイスミス。サスペンス小説で有名なのでそっち系?と思いましたが、さにあらず。1950年代初期を舞台にした、ふたりの女性同士の恋愛映画です。作者自身レズビアンだったそうですが、原作は彼女が人気作家になる前に変名で書かれた小説で、日本では翻訳されていなかったものとのこと。
この映画の魅力はなんといっても主演のふたり!昔は「俳優」を観るために映画を観るものだった、とよく言われますが、まさにそんな感じです。既婚者でありながら夫に同性愛的嗜好を隠さず離婚に踏み切ろうとするキャロル役のケイト・ブランシェット(見惚れるほどの美しさ!)、キャロルに憧れる写真家志望のテレーズ役のルーニー・マーラ(彼女の顔立ちや髪型、メイクなどはオードリー・ヘップバーンを連想させます)は共に今年のアカデミー賞の女優賞にノミネートされ、カンヌ映画祭ではルーニー・マーラが主演女優賞を受賞しました。ピンクのベレー帽やスカーフ、タータンチェック柄の衣装など、ファッションアイテムも見所です。
この映画は「アラビアのロレンス」で有名なデビッド・リーン監督の初期の代表作とされる「逢引き」(以前ビデオで観て大変感動した、とても好きな映画です)にオマージュを捧げているそうです。特徴的な時制のしかけがあり、これは「キャロル」でも踏襲されています(ヒントはファーストシーンです。「あのシーンはいつの時点での出来事なのかしら?」と疑問に思いながらご覧になった方もいると思います。私もです)。もしご覧になる機会がありましたら、両方を見比べていただくのも一興です。
Y・R
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