先週で京都の上映は終わってしまいましたが、ゴールデンウィークの休暇中に台湾のエドワード・ヤン監督の「恐怖分子」を映画館に観に行きました。1986年の映画ですが、日本での劇場公開は1996年、それ以来約20年ぶりのスクリーン上映です。VHSやレーザーディスクでのソフト化はありましたが、DVDは発売されず、長らく幻の作品となっていたものです。だいぶ以前に、NHKでアジア映画を定期的に放送する番組があったと思うのですが、それで見た記憶があります。
なんとなくホラーめいた題名ではありますが(ちなみに英題は「terrorizers」、暴力や脅迫で人に恐怖を起こさせるという動詞terrorizeの名詞形で、テロリストを連想してしまいますが)、少女がかけたいたずら電話が、一組の夫婦を破滅へと導く、サイコ・ホラーとも、サスペンスともいい難い、不思議な映画です。見えない悪意が伝染していくさまは、黒沢清監督の「CURE」(この映画は砂浜を歩いている主人公二人を追うカメラがいったい誰の視点で動いているのか分からないシーンがあって、めちゃくちゃ怖くて好きです)を連想させます。それでいて、細かく分割された少女の拡大写真が風にはためく有名なシーンなど、息を呑む美しいショットがふんだんにあります。
この監督のもので一番ソフトを入手しやすいのは「ヤンヤン 夏の想い出」(2000年)という映画で、これも大好きな作品なのですが、代表作といわれる「牯嶺街少年殺人事件」(1992年)は公開当時の配給会社が現存しないなどの事情で劇場では上映できず、ソフトも既に廃盤となったVHSとLDのみです(ちなみに「恐怖分子」もDVD化の予定はないそうです)。エドワード・ヤンのファンは誰しも思っているでしょうが、是非とも全ての作品が劇場で見られることを、願わずにはいられません。
Y.R
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