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引き算としてのアニメ
2022年06月24日
アカデミー賞で国際長編映画賞(以前の外国語映画賞)のみならず長編アニメーション部門・ドキュメンタリー部門でもノミネートされ話題になった映画「FLEE」(英語で「(安全な場所に)逃げる・避難する」の意味)を見ました。
80~90年代の内戦状態のアフガニスタンからソ連崩壊直後のロシアに脱出、親類が住むより安全な北欧への亡命を10代のうちに経験した主人公が、友人である監督に取材を受けながら過去と向き合います。彼は同性愛者で、イスラム的価値観と合わないだけではなく、これまでの生い立ちもあり、身元が分かるとおそらく彼や彼の家族が命の危険にさらされかねないのでしょう。このため監督はアニメで表現することを選択したようです。
日本人からすると懐かしいような描画線のタッチ、コマ数の少ない映像は最初少し違和感があるのですが、壮絶な個人史に現代史が重なる(アフガンにせよロシアにせよ、意図しないはずなのにあまりのタイムリーさに驚きます)一歩間違えると情報過多になりそうなテーマを和らげ、ある意味清々しく見せてくれます。
こういう引き算としてのアニメというのもアリなんだ、と映像の作り方としても勉強になる映画でした。
Y・R
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